生命医療倫理の始め方

生命倫理は、医学・生命科学と哲学・倫理学の複合分野であり、これを初めて学ぼうとするものは必ずと言って良いほど、この分野において必要とされる基礎知識をどのように手に入れるべきか、とまどうものであると思う。

 

すなわち、いわゆる我が国において理系と呼ばれる分野を専攻してきた諸兄においては、哲学などの人文系の知識を一から学ぶことを要求され、また一方では、応用倫理学を学習しようとする文系の人間にとっては、最先端の医学知識が必要とされる。生命倫理学を学ぶため、「哲学の知識がほしい」「医学知識がほしい」といった要望に対し、それを満たしてくれる書物は少ないと考えられる。

 

生命倫理学の分野では、これらの基礎知識を前提として、高度な議論が展開されているが、それらの議論の前提となる知識を手に入れるために、多くの者が独学で学べる参考文献を求めているように思う。

 

しかしながら、書店で目にする入門書の多くは、入門に過ぎ、また系統的であるがゆえに、生命倫理学の議論に必要でないような事項についても多くの時間を費やさなければならない。そして、多くの時間を費やせば費やすほど、得られた知識に対して生命倫理の議論に必要な知識があまりにも得られていないことに気づき、愕然とすることだと思う。一方で専門書ともなると、手にとる気すらおこらないと感じられるのも、至極最もであろう。

 

本稿は、そんな諸兄の要望に応じられるよう、生命倫理学の議論を行うのに特化した基礎知識を、自然科学・人文科学双方から補おうと考慮されたものである。

いわば、入門から生命倫理学を専門に学ぼうとする者のための橋渡しを担うのが、本稿である。